朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

神楽坂怪奇譚「棲」

神楽坂怪奇譚「棲」体感型配信怪奇譚」滑り込みで視聴しました。
生配信は平日で見れなかったので、アーカイブありがたい。
組み合わせは、泉鏡花役を緒方恵美さん、女役を相葉裕樹さんが演じる回。

物語の主人公は泉鏡花
眼病で目に包帯を巻いた状態の鏡花は、通りがかりの女に家まで手を引いてくれないかと頼む。
芸者だという女はそれを引き受け二人は歩き始める。
道中、女は物語に憑りつかれた講談師の噂話を話し出す。
強い気持ちを、念を込めて書かれた物語には“何か”が「棲んで」しまうという。
そんな話をしているとき、鏡花は自分は家に向かって歩いていないことに気付き…。

今回は映像配信での公演ということもあり、読み手の映し方やエフェクトに工夫があるけれど
視覚的に驚かせたり怖がらせたりということはなく。
話し手の語り方、物語の内容、そして音や照明から、手に汗かくような不思議で恐ろしい
雰囲気がじわじわ伝わってくる。

話し手のお二人は浴衣姿で、つい立てを挟んで背中合わせに椅子に座った状態で演じる。
相葉さんの襦袢?の襟が赤いのがが色っぽくて、女役の雰囲気が引き立って素敵。
男女逆転の配役だけど違和感なく、お芝居だけでなくお二人の声の作り方もすごい。
緒方さんの男性役はアニメなどでもよく聴くけど、相葉さんの女役もハマってて。
しかも途中の講談師の物語は、劇中劇のような感じで二人で男性役を演じるので
相葉さんの憑りつかれた男の演技が聴けて面白い。

憑りつかれた男の切羽詰まった、苦しげで、どうしたら良いかわからないというような
不安げな感じの相葉さんのお芝居最高。
緒方さんの、憑りつかれた男の兄弟子の、最初は軽口を叩いていたのに、徐々に状況が
おかしいということに気づいていく感じもぞくぞくする。

他の組み合わせは観れていないのだけど、どんな感じだったんだろう。
緒方さんの鏡花は気弱な青年、目が見えないことを恐れ、焦っている雰囲気。
相葉さんの女はわりとテンション高めで饒舌。
梶さんのyoutubeで、梶さんと濱田さんの稽古の様子が少し配信されてましたが
そちらのコンビはもう少し落ち着いた印象。
やっぱり演者によって結構役の雰囲気も違うなと。

物語は結局、鏡花の夢だった…ということだけれど。
藤沢さんの脚本て意外とオチはベタだなぁと、前に見た作品も。
さて、どこからが夢だったのか。
女と話をする前に、下駄と着物の音が聞こえたというのは誰だったのか。
盆を回し、ナビゲーターの周りにもずっといた赤い着物の「女童」の正体とは。
(公式Twitterいわく、女童の正体に気づいて作品の意味がわかると)
なんで鏡花が次に書こうとしている話が「天守物語」なのか。
鏡花の手を引いていた人物は、なぜ鏡花と同じ姿をしていたのか。
作中では「天守物語」と言うところは音声がOFFで演出されてましたが、語られた
あらすじがね、天守物語ですよね。

鏡花は「この話はゲンが良くないから書かない」と言い出したところ、女は
どうして・もったいない、と少し焦ったように返す。
しかし、夢から覚めた鏡花は「続きを書こう」と思い直す。
作り始めた物語に「棲み」始めた何かが、続きを書けと、鏡花にこの夢を見せたのか。
天守物語の主人公は夫人だし、女童も登場するし。
最後に女が読み上げるのは天守物語の内容だし…。

ホラーとか怪談とかそんな得意じゃないので、何が起こるのかと身構えつつ。
でも、恐ろしいだけじゃなくて、演出や物語の文体が美しくて面白かった。