朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

キングアーサー

ミュージカル「キングアーサー」行ってきました。

先週の観劇予定が中止になり、スケジュール的に行けるか微妙でしたが。
公演再開とチケット追加販売のおかげで観たかった組合せの回に行くことができました。

horipro-stage.jp




ダブルキャスト組合せ
メレアガン:加藤和樹さん
ランスロット太田基裕さん
グィネヴィア:小南満佑子さん


アーサー王伝説に関してはあまり知識が無いので通説からどの程度省略やオリジナル要素が入っているかわかりませんが、そういう人間が観ても大枠で内容が掴めてストーリーについていけるような、比較的シンプルな内容だったかなという印象。
細かいところで気になるところはあるけれど。
ざっくり流れや関係性を把握できたので、これきっかけで色々調べてみたくなる。

以下、物語を追いながら思ったことを書き連ねたら収集がつかなくなってきた。
面白い!!沼!!って感じの作品ではなかったけれど、じわじわとそれぞれの役のことを考えたりしていると色んな想いが浮かんできて、最初に受けた印象とはまた変わったりしてくる。

 
物語は、自らが王の子だとは知らずに町で暮らしていたアーサーが聖剣・エクスカリバーを手にして王に選ばれるところから。
決闘を仕切っていたのがガウェインだった?ので、あれは王宮主催の王を選ぶイベントだったのか?
序盤はメレアガンのプライドが砕かれていくことに感情移入して辛くなる。
王になるため努力し、たった今も自らの手で権利を勝ち取ったにもかかわらず、「運命」という不確かなものに奪われしまう。
しかも、アーサーから「“最高の騎士”から爵位を授けてほしい」と言われるのは、メレアガンにとっては嫌味でしかないでしょう。
最高の騎士だと言うのであれば、王座にふさわしいのは俺だ、と。

王座を取り返すと歌うメレアガンの曲にはハイトーンが多く、最初の曲だけかと思いきや後々の曲にも入ってくる。
心の悲鳴のようなイメージなのかなと思ったり。

運命を受け入れ王となったアーサーは民の声を聴き、「善き王」を目指す。
平民のシャツ姿から貴族の服装へ、そして鎧、マントと、登場するたびに装備が増えてゆくのが、王としての重責が増えているように見える。
町でケラケラと可愛く笑っていたアーサーが恋しくなる。

一つの運命の別れ道は美しい妻を娶ってしまったことか。
グィネヴィアが居なければ、モルガンの罠に嵌ることもなかったかもしれないし。
ランスロットとグィネヴィアの恋に心を痛めることもなかった。
ミュージカルの“突然恋に落ちる”系演出は全然OKなタイプなので、今回も楽しく、「浮かれてるな~」と見てましたが。
(恋愛メインの作品ではない限り)付き合うまでを懇切丁寧に描いてる時間はないし、世の中には一目惚れという言葉もありますし、サクッと「可愛くて優しい子が助けてくれた!好き!」くらいの方がいっそ清々しくて可愛い。

マーリンの立ち位置や行動原理だけが理解に苦しむ。
先代・ユーサーが部下の妻を犯す手伝いをしたり、モルガンが復讐心を持っていることを知りながら王族として迎えたり。(モルガンへの罪滅ぼし?)
マーリンは、王の命令にただ従うことを「運命」と呼んでいるような感じも。
王には考えろ・選択しろと迫るのに、自分は命令に従うだけというのも、最終的には一人で自由を勝ち取り羽ばたいてゆくのは無責任に見える。
(冒頭のドラゴンとマーリンの会話?が、席のせいか音響のせいか、あまり聞き取れなかったせいもあるか)
石川さんのちょっと堅物そうで、でもコミカルなところもある役どころはチャーミングなんだけれど、ちょっと残念。

モルガンの復讐心は納得できるけれど、当のユーサーは既におらず、矛先を息子に向けることしかできないところが空しい。
でも復讐に心を燃やしていないと生きていられなかったんだろうな…。
終盤、アーサーは「自分は母自体知らないけれど、モルガンは僅かな時間でも愛してもらえた」みたいなやり取りがあるけれど、元々知らないのと知った上で奪われるのであれば後者(モルガン)の方が辛いと私は思う。
ユーサーの欲望に巻き込まれてしまった姉弟が可哀想。

モルガンの行動で1つ分からなかったのがグィネヴィアに贈った指輪。
呪いでもかかってるのかと思いきや、そうでもなさそう。
グィネヴィアがランスロットに贈ることも見越して、二人の浮気を証明させてアーサーを絶望させるためのアイテムだったのか?

グィネヴィアとランスロットは、本作ではあまり深い仲になったような直接的な描写はない。
最終的に指輪という形が生まれてしまったけれど、他はギリギリ踏みとどまってる?か?
なんとなくこの二人の関係は擁護してあげたくなる余地がある。
ランスロットは完全に相手の身分を知らずに恋をして、想いを秘めようと努力していたところは認めたいし。
グィネヴィアは、周囲の人間がずっと身分ありきで接してきていたところに、身分も知らずに軽口を叩いてくる感覚が新鮮だったんじゃないかなと想像。
モルガンの罠に嵌ったアーサーは後ろめたくてグィネヴィアを避けてそうだし、アーサーとの距離ができたところにそういう人が現れたら惹かれるのも、まぁ。
アーサーに一途でいて、一緒に苦しみを背負ってくれるのがベストだけれど、そういうタイプのヒロインではなさそうだな(どちらかと言えば周囲に流されるタイプ)と思ってたのでイメージ通りといえばイメージ通り。
アーサーと婚約したときのグィネヴィアのドレスは赤(ピンク)だけれど、ランスロットと出会った後は白になるのが心変わりのように思える。

聖杯を探していたランスロット妖精さんのターンは急にポップになり驚き 笑
「Wake up」は何から…?
妖精の森から目覚めてグィネヴィアを救うことか、叶わぬグィネヴィアへの愛から目覚めて王の命令を遂行することか…。

クライマックスはメレアガンと、ランスロット、アーサーのグィネヴィアを巡っての三つ巴。
国のためとかではなく、山場が嫁を巡っての戦いなのが 笑
メレアガンはグィネヴィアを愛していたのか…グィネヴィアは「手に入れる」ことが目的だと言っていたし、アーサーのに奪われたものを取り返したいという気持ちもあったと思うけれど、少なからず愛…グィネヴィアに惹かれる想いはあったと思う、思いたい。

最終的にアーサーは、モルガンと腹の子も、グィネヴィアも罪には問わず、解放(追放)し、憎しみの連鎖を断ち切ろうとする。
マーリン、ランスロットといった臣下たちも失い、孤独な王の印象。
変わらず居てくれるガウェインだけが尊い…。


全体的な印象としては、音楽と衣装がとても好み。
音楽は現代的なサウンドに、ケルト音楽というのか、民族音楽的な音が入っているのが良い。
衣装は着こなせるキャストさんのポテンシャルも含めて美しさの“圧”。
片方の肩にかけて反対脇で留めるマントがとても良かった、なびく衣装大好き。
動きの後から付いてくるような重厚さを感じさせるマントと、剣さばきを同時に見れるのが眼福。
女性陣の、装飾は多くないけれど袖にたっぷり布を使った中世のドレスも素敵だった。


ホリプロ貸切公演の特典として終演後に舞台装置のデモンストレーションを見せていただけたのが嬉しかった。
ランスロットの死からモルガン・アーサーの会話シーンまでを、舞監さんはじめスタッフの方々のやり取りを聴きながらセット転換を見れる貴重な経験。
わかってはいたけれど、実際に秒単位でカウントを取りながら転換したり、静かなシーンが終わった瞬間にセットを移動させたり、短時間で繊細に行われる転換を目の当たりにすると、物語に集中できるのはスタッフさんのおかげだなと改めてすごさを感じた。