少年社中「すいせいむし」
11/24昼公演行ってきました。
主人公・カクは夢も希望もなくバイト生活を送ることに嫌気がさし、世界を終わらせる本があるという暁堂書店を訪れた。
店主・キュレイターは、本を求めて集まった者たちで命を懸けたディベート対決をし、勝ち残った一人だけが本を手にできると言う。
カクは自らを“労働者”と名乗り、戦いに挑むことを決める。
勇者・シェフ・漂流者・作家・カモメ…様々な世界観の人物が登場したり、負けたら本になるという設定が出てきたり、最初の印象はファンタジー。
ディベート対決が始まると「人生に意味はあるか」「他人のために命をかけられるか」「夢に向かうことは辛いか」と人生にまつわる哲学的な問いが投げかけられ、可愛く見えたキャラクターたちの本性が暴かれていく。
そして、次第にこの対決の意味と集められた人物たちは…と物語も二転三転し、サスペンスっぽくなるのが面白かった。
夢を追いかけても上手くいかなかったり、他人に騙されたり、求めていた結果にならなかったり、何も成しえていないことに焦り苦しんだり…登場人物たちそれぞれが人生に葛藤していて。
物語が進むにつれて一番“普通”の生活を送っている労働者の気持ちにどんどん共感できて泣ける。
書店に集められた人々は人生の「可能性」であり、「蟲毒」のように一人の人間の中で一つが選び取られていく、と言うのがこの世界観の真相。
人生には色々な可能性があるというのを真っ向から突きつけられて、いい大人が見ると本当に…考えさせられる…。
作中にも出てきた通り夢を追うのに遅いことはないんだけれど、過ぎた時間は取り戻せないというのを、年末の、この一年を振り返る時期に見るとより一層刺さるものがあった。
労働者@櫻井さんのお芝居良かった。
気弱で人生に絶望した状態から、訳も分からず対決に巻き込まれて、命を懸けることに困惑し怯え、そして最後は前向きに物語を描くことを決意する感情の変化と、超スピードの長台詞。
そして、最後にしみむしに語り掛ける優しい声音のギャップが素晴らしかった。
少年社中さんの舞台では鳥になりがちなカモメ@納谷さん。
両足で跳んだり、羽を仕舞ったり、仕草一つ一つに鳥っぽさがあって可愛かった。