朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

フランケンシュタイン

ミュージカル「フランケンシュタイン」観劇しました。

前回公演時、周りの方々が盛り上がっていて、観に行かなかったことを
後悔したので、念願の初観劇です。
メインキャスト変更なしなのが嬉しい。

美しく、絶望的で、好きなやつやん…って感じで楽しかったです。

物語前半は、ビクターがメイン。
母との死別、生命に対する執着と研究、理解者兼親友・アンリとの出会い。
そして処刑されたアンリを蘇らせようと怪物を生み出してしまうところまで。
後半は怪物の半生がメイン。
ビクターの元を去った後、飢えと寒さに苦しみ、暴力や裏切りで人間を憎み、
ビクターへの復讐心を募らせる。
そして二人は再会し、ビクターは怪物の復讐を受け家族を殺される。
ビクターは自らの手での怪物を殺し、相討ちで孤独に死んでゆく。 

登場人物は結構たくさんいたけれど、終始“二人の世界”という印象。
男同士の友情と復讐…最高のテーマ。
Wキャストは、柿澤さんビクターと加藤さんアンリ。

前半のビクターとアンリの友情がまず美しい。
孤独だったビクターの理解者となるアンリ。
殺されそうになっていたアンリの命の恩人であるビクター。
研究者として同レベルの会話ができる貴重な相手だったんだろうとか。
親がいないもの同士、孤独を共有できる相手だったんだろうなとか。
お互いに共鳴するものがあったのだろうと想像が膨らむ。

半クライマックス、アンリの処刑前の面会が一番好きなシーン。
ビクターの熱意や才能に恋のように惚れ込み、ビクターと研究のためなら
躊躇わずに死を選べるアンリ。
最初にビクターに命を救われたのもあって、この命はビクターのために使うと
最初から決めていたように思う。
「笑ってよ」と、研究を続けてくれと、前向きな言葉をかけるアンリが美しい!
膝をつくビクターの頭を慰めるようにぽんぽんするのとか本当に愛しげ。
けれどビクターからしてみれば、両親に続き親友まで亡くそうとしている残酷な状況。
冷静に感想書いているとどんどんアンリが独りよがりな印象になってくる。
アンリはビクターのために命を捧げられて満足かもしれないけれど、
親友を亡くすことがビクターにとってどう影響するか考えられていない。
優しい狂気。
しかも、自分の身代わりに親友が死んだという罪悪感も上乗せで。
アンリの美しさと残酷さと、ビクターのこれから起こすであろう行動の予感に
じわじわ絶望感が這い上がってきて恐ろしかった。
…家も家族も捨てて二人で生き延びる選択ができていたら。

そして…想像の通り。
ギロチンで切り落とされたアンリの首を元に、生き返らせようとするビクター。
しかし生まれたのは知識も記憶も理性も持たない「怪物」。
ここから始まる復讐劇はビクターの自業自得と言えばそうかもしれない。
けれど、やっぱり最後のトリガーはアンリが死を選んだことなので…。

そして、怪物が人間を憎むのは真っ当というか、半生を見ていれば当然の流れ。
痛めつけられ、利用され、裏切られ…見ていられない。
どうやって言葉を覚えたか、獣のようなところから人間らしい振る舞いを
身に着けたかなどは特に深い経緯はなかったけど、脳に残っていた知識が
機能し始めたという感じなのかな。
カトリーヌと出会ったとき、読み書きを教えてもらって仲良くなるかと
思ったけど、そういう展開にはならなかった…切ない。
最終的に言葉も行動もかなり人間らしかったけど、その辺りの成長割愛なのは
ちょっとご都合主義感。

ほとんどの役者さんが、一幕二幕で別の役を演じているのがすごい。
二つの役、反対の役どころのようでどこか共通点があるらしい?
後半のキャラはあまり劇中で背景の説明がないからゆっくり考えてみないと
わからない。

辛くて観るのにとてもパワーがいる作品だけれど
世界観や人物の美しさに惹かれまた観たくなる。