朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

ポーの一族

ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」行ってきました。

原作未読、完全に初見でしたが楽しかったです。
ミュージカル観るのも久しぶりだし、生オケも嬉しかった!

物語は1970年代の人たちがポーの一族の過去を語ることで始まる。
1幕は18世紀、エドガーがポーの一族に拾われ、バンパネラとなる物語。
2幕は19世紀、ブラックプールの町での出来事とアランとの出会い。

OPのポーの一族の登場、18世紀の貴族の館という世界観が美しくてテンションが上がる。
バンパネラは子を産むことができないらしく、血を分け与えた相手が一族に加わるので、それは美しい選ばれし一族が作られるな。
ヨーロッパのドラマチックな世界観と小池先生の演出の親和性も最高。

内容完全に初見でしたが、結構話は重めで淡々としてる感じ。
前半の、エドガーが妹とともに親に捨てられ、拾ってくれた一族が不老不死の吸血鬼・バンパネラだと知り、強制的にバンパネラにされ、一族が村人の殺されるあたりまでは話がどんどん展開されていったけれど。
後半は、正体を隠し、血を求める衝動に耐え、永遠を生きるがゆえに人と深く関われず愛に飢え、望んでバンパネラになったわけではないのにバンパネラとして生きなければならない、じわじわともがくエドガーの日々という感じ。
キービジュアルから勝手に、アランとの友情ものなのかなとイメージしていましたが、大きな出来事があって友情を育むというよりは、心の隙間や飢えが共鳴するような、互いに埋めようとするような。
家族や周りの大人たちとうまくいかない息苦しい日々の中で見つけた友人。
少しずつ二人の距離が縮まったかと思ったら、バンパネラであることがバレてまた離れて…という距離感がもどかしい!

明日海さんのエドガーは少女漫画の絵柄そのままという感じで浮世離れした不思議な雰囲気。
歌もさすがの迫力で美しかった。
千葉さんのアランは可愛らしい少年。
中流階級くらいのお家のイメージかな、貴族ではない地域の有力者の息子ということで育ちは良いけど、良い意味で普通感もある。
化粧の度合いにエドガーと結構差があったからそこはもう少し統一しても良かったのではとも思うけど。
歌は明日海さんとか、周りのミュージカルメインで活躍されている方と比べるともう一歩勢いがほしいなぁという印象。

クライマックスは、家族を亡くしたエドガーと家庭崩壊のアランが、血を分け合いバンパネラとして旅に出る。
20世紀のパブリックスクールに居る二人の、多くは語られず、ただ並んで歩く姿がかっこ良く、美しい。
二人がどんな旅をしてきたのか、していくのか、とても気になる終わり方。
原作に描かれているのであれば舞台化してほしい。

他のキャラクターも魅力的で、特に女性陣のキャラクターが個性的でたまらない。
ポーツネル男爵に見初められ、永遠の愛を求めてバンパネラとなるシーラ。
愛する男爵のために、一族の血を守るため、良くも悪くも純粋。
婚約前の可愛らしいお姉さんから、男爵夫人となった後、雰囲気は夫人としてガラリと変わるけれど変わらない純粋さが垣間見える。
エドガーの妹のメリーベルはいつまでも可愛らしい。
兄と共に居られることに幸せを感じながら、でも、大人になれないことへの悲しみが抑えきれずに出てしまうところが切ない。
涼風真世様のハンナとブラヴァツキーの全然違う二役も楽しかった。

バンパネラは不老不死と言いながら、杭や銀の弾丸には弱く死んでしまう。
血を求める衝動はあれど、ポーの一族は人を殺していたんだろうか。
彼らが人間に危害を加えているような描写がないので、人外というだけで殺されてしまうのは理不尽で切ない。
ポーツネル男爵夫妻の、人に紛れながら一族を増やし、血を守らなければと必死になるのもわかる。
傷の治りがはやいとか、生存値はちょっと高めだけど腕っぷしの特殊能力はないし、バンパネラ意外と か弱くて愛しさが増してくる。