朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

HAPPY END

SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」観てきました。

去年の分を取り戻すように連日舞台が観れることが嬉しい。
上演してくださることに感謝が尽きません。


2.5系とか、再演作品が続いていたので、久しぶりの初見のオリジナル作品。
去年の「BIRTH」ぶりかな。
原作モノとか歴史モノの、内容がある程度わかってるものも楽しいけど、現代オリジナル作品もやっぱりいいなぁ。
情報ゼロの中から作品を選び取るのは難しいのですが、今回の決め手は梅津さんの一人芝居というところ。

お芝居がうまいし好みなのと。
科白劇の千秋楽で「これが演劇の力です!」と仰っている姿を見て、この人本当に演劇が好きなんだなというのを感じて。
そんな人が一人芝居をやると聞いて、とても楽しみにしてました。

物語は太陽の膨張により人類の滅亡が決まっている現代日本
主人公・小山内風太の人生を描く。
始まりは28歳で、次のシーンでは57歳だったり、18歳の場面に戻ったり。
時系列がバラバラで、伏線のように、過去に戻ることで後から明かされる事実もあったり、小山内の人生が少しずつ組みあがっていくのが面白かった。

逆に、時系列がバラバラなことで、この物語はどこに着地するんだろうとドキドキ。
普通に人生を追うのであれば、年老いて終わりとなるけれど、この物語は35歳?で子供が生まれた日がラストになる。
小山内の人生は、生まれたときには滅亡の日が決まっていて、役者としても売れず、結婚して生まれた息子とは意見が合わず、友人や妻の死に心を痛める、行動が裏面に出たり後悔したりが多い人生。
他人に当たったり、嫉妬したり、鬱屈とする彼はめっちゃ善人というわけではないけれど、役者として、夫として、父として常に誰かを幸せにするために生きてるんだなと気付いた瞬間、小山内の気持ちを身近に感じてグッときた。
孫が生まれたときに生きる希望を見出したのと同じように、ラストの瞬間も彼にとって希望の日だのかなと。

あとは梅津さんのお芝居が面白い。
それぞれの場面で年齢が違ったり、ときには小山内風太以外の役になったり。
一人芝居たぶん初めて観たけど、当たり前だけど、登場人物は小山内以外にもいて。
友人のタツミや妻のナツキ、息子の幸生、それぞれと会話するシーンで目線の動きとかで相手の存在・行動を想像させられるのが楽しい。
一人の芝居を80分ずっと見続けられるってそれはそれで贅沢で濃い時間でした。

演出で一つ感動したのが、小山内風太の孫・セツナが役者になり、舞台を公演するという場面。
祖母の形見のカメラを客席に置きたいと言い、実際にセツナ(梅津さん)が客席に降りて席にカメラを置くという演出…。
もちろん、降りてからは言葉は発さず、そっとカメラを置いて舞台に戻るという本当に短い時間だけれど、このコロナ禍で客席を使った演出って観たことがなかったので驚いた。
めっちゃ客席を使ってほしいは思っていないですし、むしろ客席使わずに舞台上だけで完結するのがきれいだとも思いますが。
コロナ禍で舞台と客席に少し隔たりを感じていたので、梅津さんが舞台から降りられた瞬間に泣きそうになってしまった。

役者を目指す小山内の「エンタメは縮小しているけれど決してなくならない、こういうときこそエンタメが求められる」というセリフ。
人類の危機という世界観の中、重なるところがありますね。
共感したし、力も感じた。

カテコのご挨拶、そろそろ話すネタがなくなってきたと仰る梅津さん。
昨日の夕飯は某鶏肉のお店のチキン(6ピース)とお弁当だったということを教えてくれました(笑)
皆さんが演劇に求めているものが少しでもこの中にあれば良い、というようなことを仰っていましたが、とても楽しかったです。