朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

ジャック・ザ・リッパー

ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」観てきました。

この前観たシャーロック・ホームズを上演している東京宝塚劇場のお隣、日生劇場ジャック・ザ・リッパーをやっていて、もはやあの一角はロンドン。
全然テイストは違ってこちらは仄暗さ満載ですが良かった。


ダブルキャスト
ダニエル:木村達成さん
アンダーソン:松下優也さん
ジャック:加藤和樹さん

物語は「ジャック」という存在を取り巻く人々の群像劇のような感じ。
刑事のアンダーソンが事件の報告書という形式で物語を展開していく。
時系列は現在の切り裂きジャック事件から、発端である7年前の出来事へ、そして再び現在に戻り事件の顛末に繋がる。
フランケンシュタインとか、鬱々ダークファンタジーミュージカルが好きな人にはオススメ、私は好きです(笑)

登場人物はみんな人間らしいというか、不完全で歪んでいて矛盾をはらんでいて憎らしいけど憎めない。

アンダーソンは割と終盤まで事件の傍観者サイド。
コカイン中毒で金のために記者と協力し、愛する人を中途半端におとり捜査に巻き込み、切り裂きジャック事件を美談にしないために真実を隠す…かなり公私混同な刑事。
ポリーとの関係や過去は具体的に語られないけれど、クライマックスの二人のシーンが可愛くて愛しくてとても良かった…ポリー@エリアンナさんの歌声が可愛くて優しくて力強くて最高。
良かった分だけ、こんなに素敵な女性を幸せにしなかったアンダーソン!!という気持ちが募る…けど松下さんのその煮え切らない感じのお芝居が良い。
記者のモンローはこの作中珍しく、ストレートに悪というか嫌なヤツ。
ただただ金のために記事を書き、他人がどうなろうと気にしない…これだからマスコミはと言いたくなる感じの役。
田代さんがコミカルな三枚目を演じているのがとても新鮮で面白かった。

ダニエルはまず、7年前のグロリアとの出会い可愛すぎました。
ミュージカルのすぐ恋に落ちる男大好きなので、グロリアに一目ぼれ!なダニエル最高。
7年後、ジャックに殺されたと思っていたグロリアと再会し、彼女の病気を治すため新鮮な臓器を探し求める…。
「臓器を求めるとジャックが現れた」、ジャックとシンクロし始める動きで嫌な予感…途中で薄々気付いたけど、切り裂きジャック事件はダニエル(別人格)が起こしていた。
医者であるダニエルが殺人を犯す、グロリアを殺そうとしたジャックと協力してグロリアを救おうとする…ダニエルも矛盾が多いけれど、全てはグロリアのためという真っすぐだけど歪んだ愛。
グロリアも、7年前の傷と病気の姿をダニエルに見せたくないと言いながら、ダニエルと一緒に住んでいるところも矛盾であり愛。

ジャックについては謎のまま。
7年前に死体を闇取引をしていたことだけが描かれる。
金のために死体を生み出していたのか、殺人自体が目的でついでに死体を売りさばいていたのか。
グロリアを殺して面白がっていたところを見ると多少はそういう嗜好があったようだけど、どちらかというとグロリアが警察にジャックの情報を流したことへの復讐と、グロリアを殺さないでほしいと請うダニエルへの見せしめのような気もする。
7年後の(ダニエルの)切り裂きジャック事件よりは理性的な印象。
加藤さんのジャックは体格と歌声と、存在感があってかっこいい。

ジャックのナンバーはロックテイストな曲が多くて良い。

物語としては悲惨でバッドエンドだけど、ダークな話が好きな身としては楽しかった。