朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

ジキル&ハイド2023

ミュージカル「ジキル&ハイド」観てきました。
3/26夜公演。

ずっと気になっていましたが最近上演されておらず、念願の初ジキハイ。
石丸さんが今作で卒業とのことなので、滑り込みで石丸ジキルが観れて良かった…!

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ネタバレ感想



キャスト組合せ
ジキル/ハイド:石丸幹二さん
ルーシー :真彩希帆さん
エマ   :桜井玲香さん
アターソン:石井一孝さん


ジキル博士は精神を病んだ父親のために、人間の善と悪の心を分離する薬を発明する。
周囲から人体実験に反対されたジキル博士は、自らの体を使って実験を開始。
しかし、悪の心「ハイド」はジキルの意志を離れ、非道な行いを繰り返すようになる。

石丸さんのジキルはさすがの貫禄。
役柄としてはヒロイン(桜井さん)との婚約から始まるので結構若い設定なのか。
そういう意味もあって今作で卒業なのかなと思うけれど、歌声とジキル/ハイドの演じ分けが本当に別人のようで素晴らしい。
穏やかで優しい紳士なジキルと、声色も低く荒々しいハイド…特にクライマックスの1曲を2キャラ交互に歌うところは鳥肌モノ。
あと歌詞がとても聞き取りやすい。

物語としては、心の善悪についての問題提起で明確な答えは出ていない感じ。
ハイドは非道な殺人鬼だったけれど、それは自分(ジキル)の研究に反対した理事会に対してであって無差別ではない。
ルーシーを殺したことについては、ルーシーを手に入れたいという欲求か、それともジキル(自身の善)の心を折って意識を完全に乗っ取りたかったのか。
善(理性)で押さえていた悪(欲望)が独り歩きしたらどうなるかというのを見せつけられた感じ。

時代背景もあってなのか、マッドサイエンティスト系で主人公のよき理解者になるのは恋人(女)ではなく友人(男)のイメージ。
今作も、ジョンだけがジキルとハイドが同一人物だということを知り、元に戻る研究のサポートをして、最後にはエマを手に掛けようとしたハイド(ジキル)を銃殺する役目を負う。
殺してくれと懇願するジキルには躊躇して引き金を引けなかったけれど、エマに掴みかかろうとした瞬間に引き金を引いたジョン。
本当にハイドが肉体を乗っ取って行動したのか、ジキルが殺されるためにあえてハイドを演じたのか…後者のように見えた。
ジョンに引き金を引いてもらうために、友人(ジキル)を殺したという意識を背負わせないために、そして自分よりもエマを救うことを優先してくれると信じての行動。
ジキルの研究を一番近くで見て、友人として弁護士として支えてきて、そして彼を殺さなければならない破目になったジョンを想うと辛い。

物語としてはバッドエンドだけれどとても好み。
研究者の善意と好奇心が、殺人鬼の狂気に飲み込まれていく、“堕ちて”いくドラマチックさがたまらない作品。
また上演されたら観に行きたい。