朧月夜の独り言

趣味に関する備忘録と少しの日常

三人どころじゃない吉三

少年社中「三人どころじゃない吉三」
6/11夜公演行ってきました。

少年社中さん25周年記念公演ということで、おめでとうございます。
そんな記念公演の主演が梅津さんで嬉しい限り。

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ネタバレ感想



歌舞伎の「三人吉三巴白浪」を脚色した本作。
歌舞伎の方はタイトルくらいしか知らなかったのですが、歌舞伎のあらすじをざっと読んだ感じ、物語の大筋は原作の通りでエンディングだけがハッピーエンドに変わるという感じか。

名刀「庚申丸」と、百両の小判が様々な人の手に渡り、様々な因果によって殺し殺され、最後には主人公である三人の吉三たちも互いに刺し違えて死を迎えるエンディング。
しかし、閻魔大王が彼らの死を悲しみ、庚申丸に時間を巻き戻す能力を与え、お嬢吉三とともに誰も死なない未来を目指すよう命じる。

前半は、まさに金は天下の回りもの。
渡されたり、盗まれたり、拾われたりしながら百両が次々と人の手に渡り、そして金に関わった人は不思議と縁が結ばれ騒動に巻き込まれていくのが面白い。
後半は、お嬢吉三が庚申丸の能力と目的に気づき、誰も死なない運命を求めて何度もこの騒動をやり直す。
何度やり直してもバッドエンドに向かってしまう運命、繰り返すたびに人々の死を目撃しなければならない役目、繰り返すたびに疲弊していくお嬢を見ているのが辛くなってくる。
それでも、誰にも死んでほしくないと思うお嬢の原動力というか、心根の綺麗さにこちらの心が痛い。
幼少期に拐われ、親の顔も知らずに孤独に生きてきたお嬢。
他人を恨んだり妬んだりしてもおかしくない人生を歩んできたのに、「誰にも死んでほしくない」「また義兄弟の契りを交わしたい」と皆を救おうとするお嬢が、恨み辛み以上に人との縁や愛に飢えているように見えて切なく思われる。
梅津さんの、何度も運命を繰り返し嘆きながらも「リセット」と叫び続けるお芝居の熱量が最高。

クライマックスでは3人まで記憶を持ったまま繰り返せるようになり、三人吉三で何度も運命を繰り返し、やっと全員が平和に暮らす未来を勝ち取る。
いきなり平和な世界が始まって、誰がどう行動したらこの未来にたどり着けたのかが描かれないのは惜しいですが、三人吉三の努力が報われて良かったとホッとするエンディング。
役者となった美しいお嬢のセリフで締めるのも格好良かった!